シェリービネガーとバルサミコビネガー

テーブル・トーク 菊地 美升氏インタビュー

六本木にあるフレンチレストラン「ル・ブルギニオン」のオーナーシェフ、菊地美升さんのインタビュー第3弾。 今回は、マイユの「シェリービネガー」「バルサミコ」の特徴。自身の使い方を伺いました。

菊地シェフは、今もときどき、フランスの有名レストランに働きに行くのだそうですね。

はい。毎年1回、夏休みを利用して研修旅行に行っています。これまでに働かせてもらったのは、「ピエール・ガニエール」、「アストランス」、「ルドワイヤン」、「タイユヴァン」、「ブリストル」。どれも三ツ星、二つ星のレストランです。研修といっても、別に僕が料理を作るわけではないし、お店のレシピを集めに行くというわけではないんですよ。やっていることといえば、キノコを掃除したり、貝の殻を開けたり、床にモップをかけたりといった下働き。そんな仕事をさせてもらいながら、調理場の雰囲気やシェフの立ち位置、店のシステムなどを見るのがいちばんの目的です。

お客さんとして訪ねたとき、一軒一軒のレストランには、その店独特のムードや空気がありますよね。これは、フロアだけでなく調理場にもあるものなのです。僕はこれを味わいたいんですよね。自分の店を持ってしまうと、なかなか他の店の調理場を目にする機会はなくなる。だから、年に一度の研修旅行は、僕にとって新鮮で刺激的な経験なんです。

毎年、フランスを訪れていらっしゃるとのことですが、本場のフレンチで、最近、流行っているものはあるのでしょうか?

最近の傾向で特徴的なのは、料理がグローバル化していることですね。よく見かけるようになったのは、スペイン料理の要素を取り入れたフレンチ。スペイン料理というと、タパス(簡単なおつまみ)のようなカジュアルな料理というイメージがあると思いますが、最近は液体窒素を使ったニューウエーブな料理が注目されています。フランスでも、こういった新しい調理手法を取り入れているレストランが増えています。それから、アジアや日本の食材を使う料理も多いですね。わさび、柚子こしょう、のりなどといった日本の食材も、フランス料理でよく見かけるようになりました。

菊地シェフご自身は、こうした新しい潮流も取り入れていきたいとお考えですか?

僕の料理のベースは、あくまでクラシックなフランス料理。だから、調味料に、日本や中国、アジアのものを使うことはないですね。クラシックなフランス料理のベースになるのはソース。僕は、工程が非常に複雑なソースをつくり上げることが大事だと思っていて、これは、昔も今も変わりません。ただ、時代によって、求められる味はあると思いますから、クラシックを見直すことは必要です。たとえば、フランス料理の「だし」にあたるフォンは、軽やかに現代的にするか、野菜や魚介を使った軽い料理も充実させるとか…。そんな風にして、ベースを守りながら、時代に合った味を追求していきたいと考えています。

今回は、マイユのビネガーを使った料理を作っていただきました。「ナス、アボガド、カニの冷菜~ミルフィーユ仕立て」。これも、現代感覚のフレンチといえそうですね。

ナス、アボカド、カニのミルフィーユ仕立て

そうですね。これは、実際にお店でもお出ししている料理です。ポイントは2種類のビネガーを使うところ。まず、スライスして揚げたナスに塩をふり、冷やしてから、表面にエクストラバージン・オリーブオイルとシェリービネガーを混ぜたものを塗ります。これに、アボガド、カニ、エシャロットをマヨネーズで合えたものをのせ、ミルフィーユ状に組み立てていきます。器に盛りつけたら、最後に、エクストラバージン・オリーブオイルとバルサミコを混ぜたソースを回しかける。ビネガーのほどよい酸味が、素材の味を引き立ててくれます。オードブルにおすすめの一皿は、冷やした白ワインによく合うでしょう。

身近な材料で、手軽に作れそうなお料理ですね。最後に、家庭でビネガーを上手に使うポイントを教えていただけますか?

シェリービネガーは、酸味が強いのが特徴。味を引き締めたいときや、さわやかな香りをプラスしたいときに使うと効果的です。ドレッシングにしたり、マリネ液にしたりといった使い方がおすすめですね。バルサミコは、何といってもコクと甘みがポイント。今回はオリーブオイルと合わせてフレッシュなまま使いましたが、煮詰めてソースにしてもおいしいですよ。僕がよくやるのは、煮詰めてフォンドヴォーと合わせたソース。魚料理によく合うので、ぜひ、試してみてください。

フランス生まれのビネガーがあれば、家庭でもフレンチの香りを楽しめそうですね。

フランスでは、どこの家庭にでもあるビネガーです。まずは、いつも作る料理に、気軽に加えてみるといいですね。きっと、料理の幅が広がると思います。



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