種入りマスタードとシェリービネガーを使って

テーブル・トーク 下村 浩司氏インタビュー

今年7月六本木に「エディション」をオープンさせたオーナーシェフ下村浩司さんのインタビュー第3弾。 今回は、マイユを使った料理について伺いました。

さて、今回はマイユの「種入りマスタード」と「シェリービネガー」を使った料理を作っていただきました。まずは、その内容をご紹介いただけますか?

料理名は「しっとり仕上げた鱸と白ナスのマリネ~シェリービネガーとしょうが風味~」。皮をむいてマリネした白ナスの上に、塩をして低温のオリーブオイルでゆっくりと火を通した鱸をのせています。ナスも鱸もしっとり柔らかに仕上げたやさしい料理ですね。

しっとり仕上げた鱸と白ナス(万寿満ナス)のマリネ~シェリービネガーとしょうが風味~

マイユの「種入りマスタード」はどこにどのように使っているのでしょう。

「種入りマスタード」は、食材としておなじみだし、とても個性の強い味。野菜や白身魚に合わせると、素材の味に勝ってしまうんですね。そこで、マスタードのもつ香りと種の食感を分けて使うことを考えました。まず、「種入りマスタード」60gに200ccのお湯を加えて鍋で煮て、香りをお湯に移す。これを濾して、マスタード風味のエキスを取り出すんです。ナスの上にのせた泡は、そのエキスを泡立てたもの。口に入れるとほんのりマスタードの香りがして、さっぱりとしたナスと鱸とバランスよく調和します。種の粒々は、料理のアクセントとしてプラス。見た目がナスの種の粒々とよく似ているので、とても相性のいい組み合わせになっていると思います。

「シェリービネガー」はマリネ液に使っているのですね。

そうですね。今回は、野菜のブイオンに「シェリービネガー」、オリーブオイル、しょうが、塩でつくりました。マリネ液にしょうがを加えているのは、日本人になじみの深い焼きナスの感覚。ナスとしょうがはいつも食べなれている組み合わせですから、間違いないですよね。「シェリービネガー」は、強い酸度が特徴。今回はマリネ液にしましたが、そのまま使ってとんがった酸のインパクトを生かすというのが僕の使い方かな…。よりマイルドに使うなら、うまみの濃いバルサミコなんかと合わせて使うといいと思います。

ひとつの食材をそのまま使うのではなく、食材のもつ要素を分解し、再度、掛け合わせて新しいおいしさを構築する。それこそが、下村シェフが「考える料理人」といわれる理由なのですね。

ひとつの食材をじっくり見る。そこには、味、香り、食感、色などなどいろんな要素があるんです。その要素と要素を一度バラバラにし、再度、別の形でマッチングさせると、これまでになかった新しい世界が生まれるんです。さらに、食材と食材の組み合わせにもストーリー性を持たせたい。今回の料理で、マスタードの種をナスの種に見立てたようにね。たとえば、鶉の料理。鶉は穀物を餌にしているので、おなかに穀物が入っていることが多いんです。だったら、鶉と米、黒米、麦などの穀物を合わせてリゾットにしてはどうだろう…。そんな発想で、僕の料理の発想は広がっていくわけです。

なるほど。下村シェフの手にかかれば、フランス料理の世界がどんどん新しくなる…。 そんな予感がしますね。

だから、フランス料理はやめられないんですよ。フランス料理はとにかくすごい!いくらやっても完璧という域に達することはない。どこまでいても完成されることはないんです。でも、今、自分がやっていることを続け、進化し続けてければ、いつかきっと究極の世界に行き着けるような気がする。それを目指して、フランス料理を極めていきたいですね。



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